注目キーワード
  1. 会計ソフト
  2. インボイス制度

会計ソフトはどの勘定科目に計上すればよい?会計ソフトの種類別に解説

勘定科目とは、事業で発生したお金の取引がわかりやすくなるように、細かく分類したものです。会計ソフトの導入費用も勘定科目として計上できますが、勘定科目には通信費や消耗品費など多くの種類があるため、どう計上すればよいかわからない方もいるかもしれません。また、勘定科目に記載した内容は、事業の決算書や確定申告書に反映され、銀行や税務署だけでなく株主やステークホルダーの目にも留まる可能性があります。そのため、勘定科目を正確に振り分けて処理しなければ、財政状態を把握できなくなる上に、企業の信頼を損なうかもしれません。

この記事では、会計ソフトを導入した際の勘定科目や注意点を解説します。

会計ソフトの勘定科目はクラウド型とインストール型で異なる

会計ソフトの勘定科目を分ける最大のポイントは、クラウド型とインストール型の違いです。また、インストール型では費用によっても勘定科目が異なります。以下に、クラウド型とインストール型の会計ソフトでは、どの勘定科目で計上すればよいか具体的に解説します。

クラウド型の勘定科目

クラウド型の会計ソフトは、オンラインで利用する会計ソフトです。インターネットに接続できれば、時間や場所を問わずデータを閲覧・編集できます。よって、従業員の外出が多い、あるいはリモートワークを導入している組織内でもスムーズに会計情報を共有できます。また、インボイス制度の制定や電子帳簿保存法の改正など法律の変更があった場合でも、自動アップデートしてくれる点もメリットです。

クラウド型の会計ソフトでは、勘定科目を通信費としてください。理由は、クラウド型会計ソフトは自社の資産ではなく、あくまでも「インターネット利用料を支払って利用しているサービス」として扱われるためです。通信費は、他にも電話・インターネット・郵送時の送料などが該当します。クラウド型会計ソフトは、全額を通信費として計上できるため、会計処理の観点ではインストール型よりシンプルです。

インストール型の勘定科目

インストール型会計ソフトは、パッケージソフトやWeb上のソフトウェアをインストールすることで利用できる会計ソフトです。一度インストールすれば、オフラインでも利用できます。ただし、法改正やバグ対応などでアップロードが必要になっても、自動でアップデートされないため、自社やアウトソーシングでアップデートを行わなければなりません。

インストール型の会計ソフトは、金額に応じて以下のとおり勘定科目を変更します。

▼金額別のインストール型会計ソフトの勘定科目

会計ソフトの金額勘定科目
10万円未満消耗品費
10万円以上ソフトウェア

10万円未満の会計ソフトは、全額を机や紙などと同じく「消耗品費」として計上できます。一方、10万円以上の会計ソフトは無形固定資産に該当するため、勘定科目を「ソフトウェア」とし、資産計上が必要です。なお、資産計上したものは「減価償却」が必要です。

減価償却とは、長期間にわたって利用が見込まれる設備投資を、分割して経費計上する仕組みのことです。有形資産の場合、時間経過に伴い「製品が劣化して価値が落ちる」とみなされます。減価償却を行うことで、価値の低下を考慮した経費計上を実施できます。一方でソフトウェアなどの無形資産も、情報が古くなり価値が落ちたと認識されるため、有形資産と同じく経費計上を分割して負担を軽減することが可能です。

ただし、減価償却では、無制限に分割して経費計上できるわけではありません。減価償却で分割できる期間は、「耐用年数(減価償却の対象資産を使用した際に”一般的な効果を上げられる”と期待できる年数のこと)」により決定します。例えば、取得価額が10万円以上のインストール型会計ソフトの場合、耐用年数は原則として5年です。

▼取得価額の計算方法

取得価額=実際の購入金額+購入に必要な費用+事業活用に直接必要な費用

参考:国税庁「No.5461 ソフトウェアの取得価額と耐用年数

また、具体的な会計上の処理は、会計ソフトの取得価額が10万円未満、もしくは10万円以上かによって、さらに分類されます。

【会計ソフトの取得価額が10万円未満】すべて消耗品費

会計ソフトの取得価額が10万円未満の場合、無形固定資産に該当しません。よって、以下のとおり全額を「消耗品費」として経費計上できるため、勘定科目の処理としてはシンプルです。

借方貸方
消耗品費70,000普通預金70,000

【会計ソフトの取得価額が10万円以上】特例を適用せず通常無形固定資産として計上

会計ソフトの取得価額が10万円以上の場合は、以下に示すとおり、購入時と減価償却時の2回にわたり経費として計上しなければなりません。

【1回目:購入時】

借方貸方
消耗品費150,000普通預金150,000

【2回目:減価償却時】

借方貸方
減価償却費30,000ソフトウェア30,000

減価償却によって「1年間で無形資産の価値が○○円分だけ低下した」と考え、固定資産の金額を減らしていくイメージです。その際、減価償却費は以下の計算式で算出します。

150,000円(取得価額)×0.2(耐用年数5年の場合の償却率)=30,000円

参考:e-GOV法令検索「別表第八 平成十九年四月一日以後に取得をされた減価償却資産の定額法の償却率表

ちなみに、10万円以上の会計ソフトの場合、金額に応じて特例を活用することで、さらにお得に勘定科目を振り分けることができます。

  • 10万円以上20万円未満の場合
  • 10万円以上30万円未満の場合

(1)【10万円以上20万円未満】一括償却資産の損金算入を適用した場合

会計ソフトの取得価額が10万円以上20万円未満の場合は、「一括償却資産の損金算入の特例」を活用できます。「一括償却資産の損金算入の特例」は、会計ソフトの使用後3年間は、単純な減価償却をせず損金として算入できる制度です。

損金とは、法人の資産を減少させる原因となる金銭(費用や原価、損失など)のことです。法人税はまず「益金ー損金=課税所得」を求めたうえで、「課税所得×税率」で計算されるため、損金の算入金額が増えると法人税の節税につながります。

例えば、取得価額150,000円で3年間の減価償却を考える場合、以下のとおり損金を計算できます。

150,000円(取得価額)×0.334(3年の場合の償却率)=50,100円

参考:e-GOV法令検索「別表第八 平成十九年四月一日以後に取得をされた減価償却資産の定額法の償却率表

購入時と年度末の損金算入時の2回にわたり、以下のとおり経費として計上できます。

【1回目:購入時】

借方貸方
一括償却資産150,000普通預金150,000

【2回目:年度末の損金算入時】

借方貸方
減価償却費50,100一括償却資産50,100

(2)【10万円以上30万円未満】少額減価償却資産の特例を適用した場合

会計ソフトの取得価額が10万円以上30万円未満の場合は、「少額減価償却資産の特例」を活用できます。「少額減価償却資産の特例」は、中小企業が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、一定要件を満たすことで取得価額相当金額を損金に算入できる制度です。

▼「少額減価償却資産の特例」の適用対象となる法人の例

青色申告法人である中小企業者または農業協同組合等常勤の従業員数が500人以下など

参考:国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

「少額減価償却資産の特例」が適用される場合、勘定科目を振り分ける際は、以下のとおり消耗品費として一括計上できます。

借方貸方
消耗品費250,000普通預金250,000

会計ソフトの勘定科目で注意すべき点

会計ソフトの勘定科目を振り分ける際は、以下の点に注意しましょう。

サポート費用は支払手数料や諸会費などで仕訳する

サポート費用は、会計ソフトベンダーからのサポートやバージョンアップに伴い発生する費用です。サポート費用の勘定科目は、明確に法律で制定されてはいませんが、多くの場合は以下の勘定科目を設定します。

  • 諸会費
  • 支払い手数料
  • 外注費
  • 雑費

ただ、月額料金にサポート費用が含まれているなど、別途サポート費用を計上する必要がない場合は、特別に仕訳を行う必要はありません。

一度決めたルールは変えない

勘定科目は、法的に明確な分類ルールは決められていないため、企業独自で勘定科目を決めても問題ありません。ただ、自社で定めた勘定科目のルールは、特別な理由がない限り継続して使い続けなければなりません。なぜなら勘定科目を何度も変えると、自社の財務状況を正確に把握できなくなるうえ、税務調査などが入った場合に不用意な疑いをかけられる原因になる可能性があるからです。

また、企業会計原理の1つに「継続性の原理」があります。これは、「会計方針は安易に変更すべきではない」とするものです。継続性の原理を守らず、安易に会社方針を変更するとステークホルダーにも影響を与えます。その上、過去の会計結果と比較が難しくなるため、むやみに変更しないことがおすすめです。

自社で勘定科目のルールを決める際は、国税庁が発表している「帳簿の記帳のしかた」を参考にすることをおすすめします。また、独自のルールを設定する際には、「資産・負債・純資産・費用・収益」から逸脱した分類は避けなければなりません。

勘定科目を間違えても影響が出るケースは少ない

多くの場合、少し勘定科目を間違えても税金額に影響は出ません。よって、多少内訳金額が変わっても、基本的には企業の利益や支出額に大きな影響が出る可能性は低いと考えられます。

とはいえ、年間の合計金額が大きい勘定科目や支払うべき税金額が変わる科目(税の優遇対象科目や取引実態によって特殊な処理をする科目)などの場合は大きな影響が生じる場合もあるため、注意しましょう。

おすすめの会計ソフト3選

最後に、この記事でおすすめする会計ソフトを3つ紹介します。

会計ソフト名特徴代表的な機能
フリーウェイ経理LiteWindowsOSであれば、永久無料で使える
  • 仕訳形式と出納帳形式の2種類から選んでデータ入力機能
  • 科目名の設定機能
  • 仕訳日記帳や総勘定元帳、補助元帳などの帳票印刷機能
弥生会計オンライン契約してから最初の1年間は、無料で全機能を使える
  • 取引入力
  • 領収書やレシートの自動仕訳
  • 銀行口座やクレジットカードなどとの連携
  • 決算書類の作成および出力
freee会計〇×形式の質問に回答するだけで、確定申告書類を作成できる
  • 確定申告書の作成や出力
  • 銀行口座やクレジットカードとの連携
  • 請求書の作成

フリーウェイ経理Lite

フリーウェイ経理Lite

「フリーウェイ経理Lite」は、株式会社フリーウェイジャパンが提供するインストール型会計ソフトです。WindowsOSのパソコンであれば完全無料で利用可能で、インストールやバージョンアップの際にも費用はかかりません。また、以下のとおり無料で使えるものの、会計業務や企業活動において必要とされる基本的な処理を実施できます。

▼フリーウェイ経理Liteで使える機能の例

  • 仕訳形式と出納帳形式の2種類から選んで入力できる
  • 科目名を自由に設定できる
  • 仕訳日記帳や総勘定元帳、補助元帳などの帳票を印刷できる
  • 企業分析レーダーチャートやB/S構成図表など企業分析で必要なグラフを作成できる
  • 無料の給与計算ソフトや販売管理ソフトなどと連動できる など

さらに、フリーウェイ経理Liteには法人向けのプランが3つあります。有料プランでは自動仕訳などの機能が充実しているため、勘定科目をスムーズに振り分けたい企業におすすめです。

▼フリーウェイ経理Liteのプラン

プラン名月額料金(税抜)代表的な機能
無料版永久無料
  • データ入力仕訳日記帳や総勘定元帳、補助元帳の印刷
  • 勘定式決算報告書の作成
  • 損益分岐図表や月別推移図表などの作成
有料版(企業版)3,000円
  • データ入力
  • 仕訳日記帳や総勘定元帳、補助元帳の印刷
  • 勘定式決算報告書の作成
  • 損益分岐図表や月別推移図表などの作成
  • 補助簿集計表や月次補助簿集計表の印刷
  • 報告式決算報告書や前期比較決算報告書の作成
有料版(顧問先版) *税理士とデータ共有税理士事務所に要問い合わせ
  • データ入力仕訳日記帳や総勘定元帳、補助元帳の印刷
  • 勘定式決算報告書の作成
  • 損益分岐図表や月別推移図表などの作成
  • 補助簿集計表や月次補助簿集計表の印刷
  • 報告式決算報告書や前期比較決算報告書の作成

弥生会計オンライン

弥生会計オンライン

「弥生会計オンライン」は、弥生株式会社が提供するクラウド型会計ソフトです。最初の1年間は無料で全機能を使えるため、まずは会計ソフトの使い勝手を確認したいと考える企業に向いています。また、以下のとおり会計業務に必要な機能を多数取り揃えているため、多くの企業で役立つはずです。

▼弥生会計オンラインで使える機能の例

  • 決算書の作成
  • 仕訳や記帳の自動化
  • 税理士および会計事務所との連携
  • 金融機関との連携
  • 請求書との連携

特に、日付や金額などの情報を入力するだけで決算書を作成できるため、初めて経理作業に取り組む担当者でも使いやすいこともメリットです。さらに2023年12月31日(日)までに申し込むと、「Misoca」「弥生の給与明細オンライン」という別サービスも初年度無料で利用できます。コストを抑えてさまざまなサービスを試してみたい企業であれば、試してみてはいかがでしょうか。

料金プランは以下の3つです。

プラン名年額料金(税抜)代表的な機能
セルフプラン
  • 初年度:無料
  • 2年目以降:26,000円
  • 取引入力
  • 領収書やレシートの自動仕訳
  • 銀行口座やクレジットカードなどとの連携
  • 決算書類の作成および出力
  • WebFAQ
ベーシックプラン
  • 初年度:無料
  • 2年目以降:35,200円
    • 取引入力
    • 領収書やレシートの自動仕訳
    • 銀行口座やクレジットカードなどとの連携
    • 決算書類の作成および出力
    • WebFAQ
    • 仕訳相談
    • 経理業務相談

    なお、弥生会計の詳しい機能や評判については、「弥生会計の評判は?特徴や導入に向いている人も紹介」もご覧ください。

    freee会計

    freee会計

    「freee会計」は、freee株式会社が提供するクラウド型会計ソフトで、日本では代表的なクラウド型会計ソフトの1つです。freee会計では、〇×形式の質問に回答するだけで簡単に確定申告の書類を作成できます。また、自社で定めた勘定科目のルールに基づき自動で経費を仕訳できるため、初めて会計業務を行う担当者でも安心です。日々の経費もスマホでレシートなどを撮影するだけで読み込めるため、会計業務の時間を節約できます。

    freee会計の料金プランは以下の3つです。

    プラン名年額料金(税抜)代表的な機能
    スターター11,760円
    • 確定申告書の作成や出力
    • 銀行口座やクレジットカードとの連携
    • 請求書の作成
    スタンダード23,760円
    • 確定申告書の作成や出力
    • 銀行口座やクレジットカードとの連携
    • 請求書の作成
    • 領収書の写真から仕訳データの自動取得
    • 消費税申告
      プレミアム39,800円
      • 確定申告書の作成や出力
      • 銀行口座やクレジットカードとの連携
      • 請求書の作成
      • 領収書の写真から仕訳データの自動取得
      • 消費税申告
      • 電話サポート
      • 税務調査サポート補償

      なお、freee会計については、「freee会計の評判は?会計ソフトの比較に役立つ機能や料金を詳しく紹介!」でも詳しく解説しています。

      まとめ|会計ソフトの勘定科目はケースに応じて設定する

      会計ソフトの勘定科目は、クラウド型とインストール型で違います。また、インストール型の場合は取得価額によって勘定科目が異なる上、金額によっては節税につながるケースもあります。

      ただ、会計ソフトやサポート費用の勘定科目は、法的に明確に決まっているわけではありません。ルールを決める際は、自社はもちろんステークホルダーのような第三者からも理解しやすく、かつ過去データと比較できるように意識することが大切です。また、自社独自で勘定科目を決めた場合は、特別な理由がない限りルールを変更してはなりません。

      なお、本サイトでご紹介している一部の会計ソフトは、アフィリエイト広告の出稿を受けています。

      よくある質問

      インストール型の会計ソフトでは、勘定科目を何にすればよい?
      インストール型の会計ソフトでは、金額により勘定科目が異なります。10万円以下なら消耗品費、10万円以上ならソフトウェア費にすることが基本です。詳しくは、「インストール型の勘定科目」の項をご覧ください。
      会計ソフトの勘定科目で注意すべきポイントは?
      会計ソフトの勘定科目では、以下の点に注意する必要があります。
      • サポート費用は「支払手数料」または「諸会費」
      • 一度決めたルールは変えない
      • 勘定科目を間違えても影響が出るケースは少ない
      詳しくは、「会計ソフトの勘定科目で注意すべき点」の章をご覧ください。