多くの企業が会計ソフトを導入することで、会計業務の効率化を図っています。しかし、今使っている会計ソフトに、使いづらさや機能不足などの不満点を感じている方もいるかもしれません。会計ソフトは多数存在しますが、選択肢の1つとしてTKCのクラウド会計ソフトもおすすめです。TKCの会計ソフトは、信頼感を高める工夫や手厚いサポートなどが評価されています。
この記事では、会計ソフトの切り替えを検討している企業担当者に、TKCが提供している会計ソフト「FXクラウドシリーズ」の詳細や、同シリーズのメリット・デメリットを解説します。
株式会社TKCとは
株式会社TKCは、栃木県宇都宮市に本社を構える企業です。主に以下の4つの事業を展開しており、企業や地方公共団体などに向けて、幅広くICTやデータベースを活用したサービスを提供しています。
事業領域 | 事業概要 |
会計事務所向け事業 | 中小企業を支える会計事務所に対し、最新のICTとコンサルティングを通じてサポートを行っています。 |
中堅・大企業向け事業 | 中堅・大企業の決算や税務申告に関する業務を支援する「連結グループソリューション」を展開しています。 |
地方公共団体向け事業 | 最新のICTとコンサルティングを通じて、住民記録や税務など地方公共団体の業務を支援しています。 |
法律専門家・法科大学院向け事業 | 法律専門家や法科大学院向けに、法律情報データベース開発・提供を行っています。 |
会計分野においては、「FXクラウドシリーズ」で企業の会計業務効率化をサポートしています。仕訳入力業務の簡略化や納税作業の省力化など基本的な機能に加え、意思決定のサポートや金融機関との信頼構築など、企業の成長を促すサービスが特徴です。
TKCに加入している税理士経由で導入
FXクラウドシリーズは一般販売されておらず、「TKC全国会」に加盟している税理士や公認会計士を通じてのみ導入できます。
画像引用:TKC全国会の運動方針
TKC全国会は、10,000人を超える税理士や公認会計士が所属するネットワークです。所属する多数の税理士や公認会計士が、企業の黒字化に向けたサポートや優良な電子帳簿を拡大するためのアドバイスを実施しています。
特に近年は、インボイス制度の開始や電子帳簿保存法改正など、企業の会計業務に影響を与える動きが活発化しており、対応が間に合わない企業も出ています。しかし、TKC全国会であれば、10,000人という巨大なネットワークを活用して自社の経営課題解消にマッチした税理士や公認会計士を見つけることが可能です。
毎月「巡回監査」を受ける
TKC全国会のサービスを利用する企業は、毎月巡回監査を受けることになります。巡回監査とは、毎月並びに期末決算時に、企業の財務状況を確認することで決算資料や記録の「適法性・正確性・適時性」を確かめる活動です。巡回監査を受けることで、法律に則って的確に会計業務を実施できているかチェックを受けられ、指摘事項があれば指導を受けることになります。
指導の際は、単なる資料や記録の確認だけでなく、経営計画に基づいた予算執行および実績進捗のチェック、経営助言を受けられます。この巡回監査が終わると、チェックしたすべてのデータがロックされ変更できなくなるため、企業内外から不正に情報を操作されることもありません。
TKCの会計ソフト「FXクラウドシリーズ」
上記のTKC全国会を通じて利用できる会計ソフトの中で、最も有名なシリーズが「FXクラウドシリーズ」です。
画像引用:FXクラウドシリーズ公式サイト
FXクラウドシリーズでは、以下のように企業規模に応じて幅広いラインナップを取り揃えています。
製品名 | 対象となる企業規模 | 特徴 | 月額料金目安 |
FXまいすたークラウド | 〜年商5,000万円 | 機能を抑えた簡易版 | 8,000〜10,000円程度 |
FX2クラウド | 年商5,000万〜5億円 | 複数の部門管理が可能 | 12,000〜16,000円程度 |
FX4クラウド | 年商5億〜50億円 | 内部統制への対応が可能 | 50,000〜60,000円程度 |
※購入元の税理士事務所や公認会計士事務所により、詳細な金額は異なります。
FXまいすたークラウド
「FXまいすたークラウド」は、年商5,000万円までの個人事業主や中小企業を主な対象としているサービスです。シリーズの他サービスと比較すると機能は限られていますが、その分シリーズ内で最も安価に利用できます。
▼FXまいすたークラウドで使える機能の一例
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会計業務の効率化に必要な最低限の機能を備えているため、経理事務を効率化したい個人事業主や中小企業におすすめです。料金の目安は8,000〜10,000円程度ですが、事務所ごとに料金設定が異なります。
FX2クラウド
「FX2クラウド」は、年商5,000万〜5億円の企業を主な対象としている会計ソフトです。上記「FXまいすたークラウド」で解説した基本の仕訳データ入力や辞書登録などの基本的な機能に加えて、経営者が複数部門ごとで業績を管理する際にも役立ちます。また、複数人での同時接続が可能なので、経理や給与計算などの部門ごとに役割分担して会計業務を実施したい場合にも便利です。料金の目安は12,000〜16,000円程度ですが、事務所ごとに料金設定が異なります。
FX4クラウド
「FX4クラウド」は、年商5億〜50億円の企業を主な対象としている会計ソフトです。上場企業でも役立つ機能が豊富で、会計業務に留まらず企業経営をサポートする機能も搭載されています。
▼FX4クラウドの機能の例
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また、自社の事業に合わせて部門階層構造も自由に設定できます。例えば、支店ごとで部門を分けて管理できるため、それぞれの業績レポートや財務状況を詳細に把握可能です。
画像引用:FX4クラウド公式サイト
さらに、外部システムとの連携も強化されており、他社ソフトのデータを簡単に取り込めます。料金の目安は50,000〜60,000円程度ですが、事務所ごとに料金設定は異なります。
FXクラウドシリーズのメリットを評判から読み解く
FXクラウドシリーズは、会計業務の効率化に留まらず、税理士や公認会計士と連携できる点が大きな特徴です。本ソフトの活用で具体的にどのようなメリットを実感できるのか、詳しい評判と合わせて解説します。
▼FXクラウドシリーズのよい評判の一例
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会計を通じて意思決定を手助けする
FXクラウドシリーズは、会計業務のサポートだけでなく、経営における意思決定を支援してくれることもメリットです。なぜなら、TKC全国会に所属している税理士や公認会計士から巡回監査を受けられるからです。これにより、自社の経営状況や法律への対応状況などを正確に把握し、経営における意思決定に役立てられます。
他にも、取引先に関する記録から売上順位など自社の利益に関わる情報のアラートや、財務分析までも行ってくれます。財務情報は企業の意思決定に影響を与えるため、分析をサポートしてくれるのは心強いことです。実際に、FXクラウドシリーズの公式HPによると、企業全体では黒字割合が、国税庁統計では35.7%であるのに対し、TKC導入企業では57.5%です。
画像引用:FXクラウドシリーズ公式サイト
このように、TKCのFXクラウドシリーズを導入したことで多くの企業が会計面から適切な意思決定をできるようになり、具体的な成果を上げていることがわかります。
参照元:国税庁「令和3事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」
経営の透明性を金融機関に示すことができる
経営の透明性を金融機関に示せることも、FXクラウドシリーズのメリットです。なぜなら、FXクラウドシリーズは、巡回監査終了後にデータを変更できないからです。
改正後の電子帳簿保存法では、「削除や訂正履歴を残さない帳簿の修正」が禁止されています。よって、むやみにデータを変更できない仕組みを導入することで、帳簿の信憑性を担保できます。もし入力内容が間違っていた場合は、確認画面が表示されたり手順通りに進めるよう指示されたりするため、法律に基づいた厳格な会計処理が可能です。
帳簿の信憑性を担保できれば、金融機関に対しても経営の透明性を示せます。結果的に金融機関や税務当局からの信用獲得につながり、資金調達力も強化できます。
建設業や医療法人など特定の分野に強みがある
TKCのFXクラウドシリーズは、建設業や医療法人など特定分野に対して強さを発揮します。例えば、建設業であれば「建設業特化のクラウド会計システム”DAIC2クラウド”」があります。
画像引用:DAIC2クラウド公式サイト
DAIC2クラウドには、以下のように建設業ならではの業務と紐付いた機能が搭載されています。
- 財務会計と建設原価計算の連携
- 複数工事の進捗状況確認
- 工事の粗利益の比較や分析
また、「TKC全国会医業・会計システム研究会」では、以下のように医療法人向けのサポートも受けられます。業界用語を理解しているスタッフがサポートしているため、意思疎通もスムーズです。
- 病院の開業スケジュール立案
- 医療スタッフの求人や採用
- 約13,000件の病院施設の財務データを分析および編集した「TKC医業経営指標(M-BAST)」の発刊
FXクラウドシリーズのデメリットを評判から読み解く
TKCのFXクラウドシリーズは、幅広い規模の企業や特定分野に対して強みを持っています。一方で、以下のようなデメリットもあるため、評判と合わせてチェックしておきましょう。
▼悪い評判の一例
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機能を使いこなせない可能性がある
会計業務初心者でも使いやすいシンプルな設計になっている会計ソフトも数多く存在しますが、FXクラウドシリーズは、税理士と使う前提で作られたシステムです。税理士と一緒に活用することで黒字経営に向けたアドバイスや業績の分析も可能になりますが、その分だけ機能が多くなりすぎて、複雑で使いこなせないこともあるかもしれません。特に、他の会計ソフトからの乗り換えや会計ソフトの変更を予定している場合、従来とは使い勝手が大きく変わるため、慎重な検討が必要です。
費用がかかる
FXクラウドシリーズは、手厚いサポートを受けられる反面、料金は高めです。FXクラウドシリーズの利用料金は、税理士事務所ごとで異なるため一概には言えませんが、TKCの会計ソフトを導入している一部事務所の料金表は以下の通りです。
▼FXクラウドシリーズ利用料金例
ソフト名 | 月額料金(税込) |
FXまいスタークラウド | 8,000円~10,000円程度 |
FX2クラウド | 12,000円~16,000円程度 |
FX4クラウド | 50,000円~60,000円程度 |
「初年度無料」などで使える会計ソフトがあることを考えると、TKCの導入ハードルは高いかもしれません。とくに、予算に余裕のない個人事業主やスタートアップ企業などでは導入が困難と感じる方も多いのではないでしょうか。
細かな修正がしにくい
FXクラウドシリーズでは、巡回監査後にデータがロックされるため、例えば従業員から、計上し忘れていた追加の経費申請依頼が来た場合に修正できません。また、巡回監査前でも、何度も修正していると不審に思われる可能性があります。よって、会計処理上のミスが発生しても修正できず、ミスが理由で税務調査が入るなどのリスクが発生するかもしれません。
FXクラウドシリーズが向いている企業
上記の機能やメリット・デメリットを考慮すると、TKCのFXクラウドシリーズは以下のような企業におすすめです。
- 費用がかさんでも金融機関からの信頼を得たい
- 税理士と連携して会計業務を行いたい
費用がかさんでも金融機関からの信頼を得たい
FXクラウドシリーズは、巡回監査後のデータロック機能に加え、税理士との連携が前提の会計ソフトなので、金融機関からの信用を高めやすいことが特徴です。よって、スムーズに資金調達したい企業におすすめです。
税理士と連携して会計業務を行いたい
FXクラウドシリーズは税理士との連携が前提であるため、会計業務のすべてを税理士に任せることもできます。もちろん一任するだけでなく、税理士と一緒に利用し自身でも財務状況を確認しながら会計業務を進められれば、企業の財務状況を正しく把握できて一層安心です。特に、規模が大きい企業ほど監査も厳しくなるため、FXクラウドシリーズのように税理士と連携できる会計ソフトを導入することをおすすめします。
まとめ|TKCの会計ソフトは費用をかけても税理士と連携して会計業務を行いたい企業におすすめ
TKCの会計ソフトの特徴は以下の通りです。
- 税理士と一緒に利用することが前提となっている
- 単なる会計業務の管理だけでなく経営状況の改善など幅広い機能を搭載している
- 巡回監査後に過去のデータを安易に修正できない
サポートや機能が豊富な分、他の会計ソフトより操作が難しいかもしれません。そのため、会計経験が豊富でシステム操作に慣れている従業員がいる企業におすすめです。
また、金融機関から信頼を獲得したい、もしくは税理士から細かなサポートを受けて正確な会計業務をしたいと考えている企業でも有効活用できます。
よくある質問
Q1.TKCの会計ソフトのメリットはなんですか? |
TKCの会計ソフトは、会計業務のサポートに加えて経営の意思決定を支援してくれる機能が搭載されています。また、データをむやみに改竄できない仕組みとなっていることもメリットです。詳しくは、「FXクラウドシリーズのメリットを評判から読み解く」の章で解説しています。 |
Q2.TKCの会計ソフト「FXクラウドシリーズ」の費用はいくらですか? |
FXクラウドシリーズの費用は会計事務所ごとで異なりますが、以下が目安です。
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