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事業再生とは|事業再生の手段・流れ、選ばなかったときに行うこと

事業再生は会社が不採算事業を立て直す手段の1つです。

しかし事業再生は滅多に経験する機会がないため、実行を検討している方の多くが具体的なイメージが掴めない状態です。

そこで事業再生について網羅的に解説します。

事業再生とは何か、実行するメリット・デメリット、流れ、具体的な方法などを解説するため、本記事を最後まで読めば自社の状況に合った方法で事業の立て直しを行えます。

ぜひ参考にしてください。

事業再生とは経営の抜本的な立て直し

「事業再生」とは、危機的な状況にある企業経営を立て直すための施策を指します。

事業再生と混合して使われがちな類語として挙げられるのが「企業再生」です。事業再生が事業の収益性を見直すのに対し、企業再生では企業単位での見直しを行って、採算の取れない事業は主要のものであっても廃止する可能性があります。

事業再生を行うメリット

事業再生を行う主なメリットは以下の3つです。

事業再生を行うメリット

  • 会社を存続させられる
  • 従業員の雇用も守れる
  • 経営者が個人資産を持ち出さずに済む

各メリットについて詳しく解説するため、事業再生を行うデメリットと合わせて検討してください。

会社を存続させられる

会社が経営危機に陥ったときには、事業再生によって事業の立て直しを行わないと経営状況が改善されず、会社を廃業させてしまう可能性が高くなります。

廃業すると会社が提供していたモノ・サービスを消費者に届けられなくなるほか、会社に蓄積している利益を獲得するためのノウハウや取引先などを失って代表者の収入が大幅に減少します。

事業再生をすれば上記のような廃業による問題の予防が可能です。

従業員の雇用も守れる

事業再生にはある程度の従業員の雇用を保つ効果があります。

場合によっては経費削減のために従業員を解雇しなければならないものの、廃業するときに比べると解雇者数は少なくできます。

事業再生は従業員が先行きに不安を感じずに生活するためのサポートとしても効果的です。

代表者が個人資産を持ち出さずに済む

株式会社であれば代表者個人に会社の借金や買掛金などの債務を返済する義務はありませんが、会社を破産・特別清算で廃業する場合は、代表者が個人資産を使って返済義務が発生します。

代表者の個人財産で返済しきれない場合には、代表者個人も自己破産する必要がありますが、事業再生によって破算・特別清算を回避すれば、代表者が個人資産を持ち出さずに済みます。

事業再生を行うデメリット

事業再生を行う主なデメリットは以下の2つです。

事業再生を行うデメリット

  • 専門的な知識・スキルが必要になる
  • 事業再生ができるまでは精神的な負担が大きい

各デメリットについて詳しく解説します。事業再生を行うメリットと合わせて検討すると適切な選択が可能です。

専門的な知識・スキルが必要になる

事業再生を行うときは自社の現状と企業価値を調査する専門的な知識・スキルが必要になります。特に自社の企業価値は事業再生をするべきかどうかの判断材料になるほか、後述する資金調達をスムーズにするためにも必須です。

手続きにも高度な専門知識・スキルが欠かせません。事業再生にはさまざまな種類の手続きがあり、会社の状況、企業価値、関係者の意向などの要素を統合して適切なものを選ぶ判断能力が求められます。また手続きをスムーズかつミスなく進めるための知識・スキルも重要です。

事業の立て直しを成功させるためには、コンサルティング費用を払って専門家に依頼したうえで綿密な打ち合わせを重ねると効果的です。なお法的な手続きを行うのでコンサルティングだけでなく弁護士への依頼を行う場合もあります。

事業再生ができるまでは精神的な負担が大きい

事業再生は必ずしも成功とは限らないため、代表者・従業員は先行きの不安を感じながら日々の業務を行わなければなりません。

また事業再生には債権者・スポンサーとの交渉法的な手続きなどの精神的な負担がかかりやすい場面が多くあります。

事業再生の流れ

事業再生を行うときの流れは以下のとおりです。

事業再生の流れ

  1. 事業の実態調査(デューデリジェンス)を行う
  2. 事業再生計画を立てる
  3. 事業再生を実行する

工程ごとに解説するため、実行する際のイメージ作りに活用してください。

1.事業の実態調査(デューデリジェンス)を行う

事業の立て直しを行うためには会社の現状に関する正確な把握が必須です。

事業再生における調査は「実態調査(デューデリジェンス)」と呼ばれ「DD」と略称される場合もあります。

実態調査(デューデリジェンス)では資料に基づく分析や役員・従業員への聞き取りなどが行われ、方針決めに役立てられます。

2.事業再生計画を立てる

「事業再生計画」とは事業再生の方法や進め方をまとめたものです。

実態調査(デューデリジェンス)を元に自社にとって最適な方法や進め方を決め、実行した際のシミュレーションによって調整して作成します。

後述する民事再生や会社更生などの法的な手続きを行う場合は、この段階で法律に規律されている要件を満たしているかどうかの確認が必要です。

3.事業再生を実行する

事業再生計画に則って事業再生を実行します。

実態調査(デューデリジェンス)におけるシミュレーションが完璧であるとは限らないため、結果に応じて計画の見直しや改善施策の立案・実行などを行います。

具体的にどのような方法があるのかは、事業再生の具体的な方法にて解説します。

事業再生の具体的な方法

事業再生を行うときはさまざまな方法から選択が可能で、具体的な方法は以下の7つです。

事業再生の具体的な方法

  • 資金調達をする
  • 債務の支払期日をリスケジューリングする
  • M&Aを行う
  • 民事再生を行う
  • 会社更生を行う
  • 私的整理を行う
  • 事業再生ADRを行う

各方法について詳しく解説するので、自社の状況を鑑みたうえで比較検討に役立ててください。

資金調達をする

実態調査(デューデリジェンス)によって機器・人材への投資事業再生に関するコンサルティング費用が必要になった場合は、資金調達が必要になります。

主な資金調達の方法は金融機関からの融資です。ほかには株式の第三者割当増資・少額私募債などの社債の発行やクラウドファンディングなどの方法が挙げられます。

事業再生では支援金の取得も可能で、代表的な支援金には日本政策金融公庫の「事業再生・企業再建支援資金」があります。

債務の支払期日をリスケジューリングする

融資の返済や取引先への支払いなどに追われている場合は、債務の支払期日をリスケジューリングする対応が必要です。

支払期日のリスケジューリングをした後は、売上拡大とコスト削減によって資金繰りを回復させてから返済を行います。

M&Aを行う

「M&A」とは、会社の合併(Mergers)と買収(Acquisition)の頭文字を取ったものです。

会社が複数の事業を手掛けており、ある事業の売上が乏しく自社で売り上げ拡大ができない場合はM&Aが行われます。

M&Aの方式には下表のとおり4つの種類に分かれます。

M&Aの方式

方式詳細
企業再生方式スポンサー企業の子会社になり事業再生を行う。
事業譲渡方式他の法人に経営権を譲渡して事業再生を行う。
会社分割方式他の法人に会社経営を移転させ、採算の取れる事業と取れない事業を分けた状態で事業再生を行う。
第二会社方式役員や従業員が新会社を設立して資産と人材を引き継いだうえで、事業譲渡方式(または会社分割方式)と清算を併用して事業再生を行う。

上記のほかにも不採算事業を取り扱う子会社を設立して株式を売却する方法も可能です。

M&Aを行うときは希望の価格・タイミングによって売却できるとは限らないうえ、必ず事業が回復しない可能性もあるため留意が必要です。

民事再生を行う

「民事再生」とは、民事再生法に基づいて行われる倒産処理手続の1つです。

経済的な危機に陥っている債務者に関する再生計画を立て、債務者・債権者との間の権利関係を適切に調整する手続きを行います。なお計画は債権者や株主などの関係者の同意と栽培所の認可を受けたうえで定められ実行されます。

民事再生では代表者がそのまま経営を続けられるため、代表者を変えたくない場合におすすめの事業再生方法です。

会社更生を行う

「会社更生」とは、会社更生法に基づいて行われる倒産処理手続の1つです。

会社更生では経済的な危機に陥っている株式会社に関する更生計画を立て、利害関係者の利害を適切に調整する手続きを行います。なお計画は債権者を含めた関係者の同意を受けたうえで定められ、手続きは裁判所が選任した更生管財人が手続きを行います。

会社更生は株式会社のみが行え、実行後は代表者が変わらなくてはならない点に注意が必要です。

私的整理を行う

「私的整理」は法律に基づかずに行われる倒産処理手続の1つです。会社が抱えている負債について金融機関や取引先などの債権者と交渉をして、債務の免除や支払い条件の緩和をしてもらう方法を指します。

私的整理は法的な手続きではない影響で透明性が低いため、私的整理に関するガイドラインや中小企業の事業再生を支援する中小企業再生支援協議会の規定に則って行われます。

事業再生ADRを行う

「ADR」とは、中立的な第三者機関であるADR事業者の協力の元、民事再生や会社更生などの法的手続きをせずに行う事業再生です。ADEは裁判外紛争解決手続を指す「Alternative Dispute Resolution」の頭文字を取ったものです。

ADRには民事再生や会社更生などの法的手続きでは得られない以下のメリットがあります。

ADRを行うメリット

  • 非公開での手続きができる
  • 少額の商取引債権の優先的な支払いができる
  • 上場企業である場合は上場を維持したまま行える
  • 債務免除に関する優遇税制の補償を受けられる
  • つなぎ資金について中小企業基盤整備機構による保証が受けられる

ちなみにADRを主催するのは一般社団法人事業再生実務家協会(JATP)で、ADR法および産業競争力強化法に基づく法務大臣と経済産業大臣の認証を受けて手続きを行います。

事業再生を成功させるコツ

事業再生を行うときは以下3つのポイントを押さえると成功につながります。

事業再生を成功させるコツ

  • 事業再生するかどうかの決断は早めに行う
  • 関係者への説明・情報共有を丁寧に行う
  • 専門家のアドバイスを受ける

本項では、それぞれについて詳細に解説します。

事業再生するかどうかの決断は早めに行う

会社の経営状況が悪化するに従って選択肢が狭まるため、早めの決断が重要です。

例えば、返済が滞っている銀行が債務免除に応じない場合は、リスケ、資金調達、私的整理、事業再生ADRなどが難しくなります。

さらに遅れると、主要取引先を失う、事業再生のための資産がなくなる、税金の滞納によって差し押さえを受けるなどの問題が生じ、事業再生自体ができなくなってしまいます。

選択肢が多い段階での決断がおすすめです。

関係者への説明・情報共有を丁寧に行う

事業再生では債権者や株主などの関係者に影響を与えるため、詳細な説明と情報共有によって納得してもらう必要があります。

事業再生において関係者にしてもらう主な影響

  • 債権者の債務が免除される
  • 株主の権利が制限される
  • 従業員の環境や待遇などが変化する

説明・情報共有をおろそかにするとトラブルに発展する可能性があるため、事業再生計画書を共有するだけでなく、こまめな進捗連絡も大切です。

専門家のアドバイスを受ける

事業再生を行うときは複数の方法を考慮して事業再生計画を立て、金融機関やスポンサーとの交渉や法的な手続きを実施する必要があり、専門的な知識とスキルが求められます。

事業再生の専門家にコンサルティングを依頼すればスムーズかつ効果的な事業再生が期待できるうえ、代表者の精神的な負担を軽くできます。

事業再生を行わない場合にすること

検討した結果「事業再生を行わない」と決断した場合、企業が取れる選択肢は以下の3つです。

事業再生を行わない場合にすること

  • 特定調停をする
  • 破産手続きを行う
  • 特別清算を行う

1つずつ詳しく解説します。事業再生を行うメリット事業再生を行うデメリットと合わせて検討に役立ててください。

特定調停をする

「特定調停」とは、債権者が裁判所に申し立てを行い、調停委員会の仲介によって債権者と企業が債務の弁償方法を話し合う方法を指します。

特別調停の中でも「廃業支援型特定調停」は廃業を前提にして行われるもので、債務超過の可能性がある企業が円滑に廃業・精算できるように促すために行われます。

民事再生と比較すると費用を安く抑えられるのが特別調停のメリットです。

破産手続きを行う

「破産」とは破産法に基づく手続きを指します。

代表者は裁判所に破産を申し立てたうえで、破産管財人の元で債権額に応じた資産を債権者に分配し、同時に会社の法人格は取り消され法人としての権利が失効されます。

特別清算を行う

「特別清算」とは株式会社のみが採用できる清算手続きで、破産とは異なり会社が裁判所を介さず自主的に行います。

内容は破産手続きと同じですが、破産では破産管財人が手続きを主導する一方、特別清算で主導するのは特別清算人です。また債権者集会において債権者の同意が必要な点も異なります。

事業再生に活用できる会計ソフト3選

事業再生を行うときは資金調達や債務支払期日のリスケジューリングのために、会社の財務状況を正確に把握する必要があります。

会計ソフトを導入すると手間が少ないうえにミスのない計算が可能です。

事業再生に活用できる会計ソフトは以下の3つです。

事業再生に活用できる会計ソフト

  • マネーフォワード クラウド会計
  • 会計王
  • フリーウェイ経理Lite

本項では、会計ソフトそれぞれの特徴や事業再生を行ううえでの導入メリットについて解説します。

マネーフォワード クラウド会計

マネーフォワードクラウド

引用:マネーフォワードクラウド公式サイト「マネーフォワード クラウド

マネーフォワードは経営の見える化を実現できる経理ソフトです。

金融機関の入出金データを自動取得してリアルタイムで数字が共有されるため、現在の経営状況が確認でき、事業再生を始めるかどうか、どう進めるかの指標として活用できます。

また取引がインボイス制度の適格請求書発行事業者と行ったものか、チェックボックスを用いて判別できるなど、最新の法改正への柔軟な対応も可能です。

ほかにも帳簿、レポート、決算書を自動作成したり、勤怠管理やマイナンバー管理なども可能であるうえに、使用するうえで不明点が出た場合はメールやチャットなどの充実したサポートを受けられます。

初期費用0円で、料金は月額3,980円からです。

会計王

会計王

引用:ソリマチ株式会社公式サイト「経理・会計ソフト「会計王」製品概要|ソリマチ株式会社

会計王は中小企業・個人事業主などの小規模事業者様に特化した会計ソフトです。

中小企業・個人事業主を中心に累計出荷本数は200万本以上で全国40万個の事業所で使用されているため、事業再生を検討している中小企業の経営者・個人事業主にとって有益な会計ソフトであるといえます。

クレジットカードや銀行と連携して帳簿をミスなく自動入力する機能があるほか、インボイス制度や改正電子帳簿保存法に対応しており、導入時に悩みがあれば、Zoom上でのオンライン相談も可能です。

料金は44,000円(希望小売価格)で、30日間なら無料トライアルを利用できます。

フリーウェイ経理Lite

フリーウェイ経理Lite

引用:株式会社フリーウェイジャパン公式サイト「フリーウェイ経理Lite

フリーウェイ経理Liteは経理業務に必要な基本的機能を一通り使える経理ソフトです。

無料版なら登録すれば永久的に無料で使えるため、事業再生において資金繰りに悩んでいる場合でも活用できます。

マニュアルやFAQなど、初心者の学習に役立つコンテンツが豊富であるほか、WindowsOSがあれば、不具合の修正や機能追加による保守があっても、永年完全無料です。

なお有料版の料金は月額3,000円で、データをパソコンだけでなくインターネット上でも保存できるようになります。

まとめ|事業再生によって業績を回復させよう

業績が悪化しているときは早めに事業再生を決断し、専門家に依頼することで、さまざまな選択肢から最適なものを選び、スムーズかつ効果的な事業再生が期待できます。

実際に事業再生を行うときは以下を参考にしてください。

本記事の内容まとめ

  • 事業再生とは経営の抜本的な立て直しのための施策で、企業再生とは異なり事業単位で行う
  • 事業再生を行うメリットは、会社を存続させられる従業員の雇用も守れる経営者が個人資産を持ち出さずに済むの3つ
  • 事業再生を行うデメリットは、専門的な知識・スキルが必要になる事業再生ができるまでは精神的な負担が大きいの2つ
  • 事業再生の流れは、1.事業の実態調査(デューデリジェンス)を行う2.事業再生計画を立てる3.事業再生を実行する
  • 事業再生の具体的な方法として挙げられるものは、資金調達をする債務の支払期日をリスケジューリングするM&Aを行う民事再生を行う会社更生を行う私的整理を行う事業再生ADRを行うの7つ
  • 事業再生を成功させるコツは、事業再生するかどうかの決断は早めに行う関係者への説明・情報共有を丁寧に行う専門家のアドバイスを受けるの3つ
  • 事業再生を行わない場合は、特定調停破産手続特別清算の3つから選ぶ
  • 事業再生に活用できる会計ソフトは、マネーフォワード クラウド会計会計王フリーウェイ経理Liteの3つ

本記事には、事業再生の具体的な方法から、成功のポイントまで記載しているので、事業再生を検討している、実施予定のある企業は参考にしてみてください。

よくある質問

Q1.事業再生とは何?
事業再生とは、危機的な状況にある企業経営を立て直すための施策を指します。
混合されがちな類語「企業再生」との違いは事業再生が事業の収益性を見直すのに対し、企業再生では企業単位での見直しを行って、主要の業務の1つであっても採算の取れない場合は廃止する可能性があります。
Q2.事業再生には具体的にどのような方法がある?
事業再生の具体的な方法は以下の7つです。
  • 資金調達をする
  • 債務の支払期日をリスケジューリングする
  • M&Aを行う
  • 民事再生を行う
  • 会社更生を行う
  • 私的整理を行う
  • 事業再生ADRを行う
各方法の詳細については事業再生の具体的な方法に記載してあります。