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海外に事業展開する際の会計管理は?海外対応の会計ソフトを導入すべき?

少子高齢化や労働力人口の減少により、さまざまな業界で市場縮小が懸念されていますが、そのような状況下でも事業拡大すべく、大手からベンチャーまで幅広い企業が海外進出を検討しています。しかし、各国の会計基準や法制度は日本と異なるため、海外進出を検討する際は会計ソフトの変更も含め入念な準備が必要です。

この記事では、海外進出時の会計問題や海外対応の会計ソフトを導入すべき企業の特徴、おすすめの製品などについて解説します。

海外進出時に発生する会計問題

日本企業が海外に進出する際、多くの企業が会計に関する問題に直面します。というのも、日本と世界では会計基準が異なるからです。

会計基準とは、企業が財務諸表を作成する際のルールのことです。一定の基準を設けて財務諸表を作成することで、企業ごとに書類の書式が異なり他社との業績比較を実施しにくくなるといった事態を防止できます。

▼会計基準の種類

  • 日本会計基準国際会計基準(IFRS)
  • 米国会計基準修正国際基準(J-IFRS)

日本では、日本会計基準を使うことが一般的です。日本会計基準は1949年に公表された企業会計原則をベースに制定されており、2001年からは企業会計基準委員会が設定した日本独自の会計基準として導入されています。

一方で、日本以外の国では国際会計基準(IFRS)を使うことが一般的です。国際会計基準審議会が定めたルールであり、EU域内の上場企業では適用が義務化されるなど、国際的にも導入が広まっています。従来までは各国が経済環境や歴史を考慮した独自の会計基準を設けていましたが、日本も含めて国際会計基準の適用を開始する国が増えています。

このように、日本と海外では根本的な会計基準が異なるため、日本基準で作成した財務諸表は他国で認められないことがほとんどです。海外進出を目指す日本企業にとって、異なる文化や制度に対応できる環境を整備することは必須といえます。

根本的な会計基準が異なることに加えて、以下のような会計問題が発生する可能性もあります。

リアルタイムにデータを確認できない

日本と海外は距離が離れているため、リアルタイムで会計データを確認できないことがあります。また、各国の現地法人が独自フォーマットの会計ソフトを導入しており書式が異なる場合、海外拠点の財務や業績の把握に時間がかかります。

さらに日本本社と海外子会社の間で、迅速性や正確性への認識が異なる点も考慮が必要です。日本本社ではこまめにデータを更新したり整合性をチェックしたりする一方、現地法人の従業員は、国民性の違いから数値を大雑把にしか確認しないということもあり得ます。

こうした状況の中で、満足できるデータをリアルタイムでチェックするには、海外での仕事に対応した会計業務の確立が必要です。

情報の信憑性に不安がある

海外と会計業務をやり取りする中で、情報の信憑性に不安が残るケースもあります。

海外拠点の会計を管理する場合、現地の会計基準や商習慣、法律、現地語で書かれた数値の理解などが必要です。しかし現地法人が独自のフォーマットで管理していると、日本本社の人間が内容の正誤を確認できなかったり、何について書かれているかわからなかったりすることもあります。内容を正しく確認できなければ、意図せずとも会計業務でミスが発生するかもしれません。

トラブルを防ぐためには会計レポートの信憑性チェックが必須ですが、日本本社が直接現地法人の取引情報などを確認するには手間がかかります。

日本本社の手間をかけずに会計業務の間違いや不正を防ぐには、海外の言語や商習慣、税率などに対応した会計ソフトの導入が必要です。

連結決算データの作成に手間がかかる

日本本社と海外現地法人で連結決算データを作る際に手間がかかる、という問題もあります。

日本本社と海外子会社との間では、会計基準や言語、通貨、税制度などが異なります。会計基準が異なると、連結決算データを作成する際に日本本社の基準に組み替えなければなりません。税制が異なっていると、同じ会計ソフトを使えないケースもあります。

また、現地の取引内容を確認するには言語翻訳や通貨の円換算などが必要ですが、こうした操作を手動で行うのは手間です。

上記の作業を効率化して、会計業務にリソースを割かず連結決算データを作成するには、自動で言語翻訳や円換算などを実行できる海外向けの会計ソフトが必要になります。

海外対応の会計ソフトを導入したほうが良い企業の特徴

海外対応の会計ソフトを導入すべき企業の特徴は以下の通りです。

上記のような企業で海外対応できる会計ソフトを導入すれば、企業のグローバル化を促進できたり簡単に外貨計算を行えたりできます。

海外進出をしている・目指している企業

海外進出をしていたり将来的に目指したりしている企業では、海外対応の会計ソフトが必須です。多言語に翻訳できたり為替レートに従って自動で外貨を円換算できたりする会計ソフトを導入することで、海外進出を円滑に進められます。

また、海外対応の会計ソフトは日本語が堪能でない外国人従業員も利用できるため、採用できる人材の幅も広げられます。とくに海外拠点で現地の従業員を探す際、日本語が堪能な人物を探すのは困難です。

日本語能力に関わらず高いスキルや経験を持つ外国人従業員を採用できれば、貴重な人材を逃さず獲得して自社の成長速度を早められます。

外資系企業が主な取引先である企業

海外と関係が深い外資系企業との取引が多い場合は、海外対応の会計ソフトが必要です。

外資系企業との取引では外貨による売買の機会が増えるため、会計業務の際に為替レートをもとに外貨を日本円に換算しなければなりません。もしも手動で換算すると、数字の記入漏れや計算ミスなどの発生リスクがあります。取引先が多いほど、ミスのリスクは増加します。

海外対応の会計ソフトであれば、外貨の円換算を自動で実施してくれるため、業務を効率化できるうえヒューマンエラーもほぼ発生しません。

海外出張が多い企業

自社で拠点を持っていないが海外出張の機会が多い企業の場合、海外対応の会計ソフトが必要です。

海外出張時は、交通費や現地での接待費、宿泊費、生活用品の購入費などさまざまな部分で経費が発生します。上記の経費を精算する際は、為替レートに沿って外貨から日本円に計算し直さなければなりません。海外出張の回数が多いほど円換算する機会も多くなるため、業務を圧迫する一因となります。

外貨計算に対応した会計ソフトを導入できれば、経費精算を自動化して業務効率も改善できます。

海外展開をしている・目指している企業が会計ソフトを選ぶ際のポイント

海外展開を実施していたり目指していたりする企業では、会計基準や通貨の違いによるトラブルを防止するため、新たな会計ソフトの導入を検討しているケースも多いはずです。海外対応の会計ソフトを選ぶ際は、以下のポイントを意識することが大切です。

多言語に対応しているか

自社が展開する国の言語に対応しているかの確認は必須です。英語圏以外でも事業展開するのであれば、中国語やタイ語、ベトナム語など他言語への対応が必要になります。

また、現地で採用した外国人従業員も、全員英語が話せるとは限りません。母国語しか扱えないケースもあります。将来的に幅広い言語圏での事業展開を検討しているのであれば、英語以外の多言語に対応しているかはチェックが必要です。

正しく円換算できるか

現地の通貨を正しく円換算できるかも重要なポイントです。

現地の決算や経費など、外貨で記入されたものを手動で日本円に換算する場合、手間がかかるうえヒューマンエラーの発生リスクもあります。業務を効率化し現地法人の会計情報を迅速かつ正確に把握するには、自動で正しく円換算できる機能が必要です。

円換算を自動で実施できれば、計算ミスを減らして修正や確認の手間もなくせます。

サポート体制が充実しているか

海外対応の会計ソフトを導入する際は、サポート体制の内容もチェックしておきます。

多言語や海外の通貨に対応している会計ソフトは、従来利用していた製品より操作が複雑なケースが多いです。自動で円換算や現地の会計基準に合わせてくれるとしても、操作に慣れるまでは記入箇所を間違えたりレポート作成方法がわからなかったりすることも考えられます。

導入後のサポートを行っている会計ソフトであれば、トラブルや疑問点が発生した際に適宜解消できるため、円滑に運用を始められます。具体的なサポート方法や対応時間などは、製品によって以下のように異なるため、事前の確認が必要です。

  • サポート形式は、電話・メール・対面のどれになるのか
  • 24時間体制で対応してもらえるのか
  • 現地語で対応してもらえるのか

おすすめの海外向け会計ソフト

多言語対応やサポート体制の充実度合いなどを考慮すると、以下の会計ソフトがおすすめです。

multibook

mutibook

multibookは、株式会社マルチブックが提供する海外対応の製品です。厳密には会計ソフトではなく、ERPシステムに該当します。ERPとは、統合管理した企業情報をもとに人員や資金などのリソースを適切に配分することで、経営をサポートする製品のことです。

月額料金は、3ユーザーで30,000円(ユーザ数や伝票による課金あり)という低価格を実現しています。低価格でありながら、会計や在庫データ、販売データ、受発注データ、購買データ、固定資産、従業員の経費精算など、幅広い情報を管理できます。

最短2週間というスピード感でシステムを導入できる点も魅力です。会計システムだけであれば、最短1週間で導入できます。

mutibook

スピード感があるため、積極的に海外展開を推進したい企業でも使いやすいはずです。

また、クラウド型であるためユーザー側でサーバー準備は不要であり、インフラの保守担当者も必要ありません。このように、料金の安さやサーバー準備が不要である点などから、導入のハードルは低いといえます。

費用・プラン

初期費用月額料金主な機能
100,000円30,000円〜/3ユーザー会計伝票入力機能証憑添付機能グループ財務諸表機能在庫数量残高照会機能収益性分析機能など

※2023年11月時点の情報です。最新情報は各公式Webサイトにてご確認ください。

60日間の無料体験版も用意されています。

対応言語一覧

  • 日本語
  • 英語
  • タイ語
  • ベトナム語
  • 韓国語
  • ミャンマー語
  • ドイツ語
  • フランス語
  • スペイン語
  • 中国語(繁体字or簡体字)
  • インドネシア語

上記以外の言語にも対応できるため、詳細はお問い合わせください。

サポート体制

  • メールやチャット、Web会議でのオンラインサポート完備(日本語と英語で対応可能)
  • 新機能追加時の無料アップグレード
  • セミナーやウェビナーの開催
  • 他社ERPソフトからの移行支援
  • 稼働後の業務代行サービス(マスタの追加・変更作業など)

など

多言語・多通貨に対応しつつ、低価格で利用できるERP型会計ソフトというのは魅力的です。multibookは世界30ヶ国以上での豊富な導入実績があり、海外支援コンサルティングの経験も豊富なため、海外展開を推進したい企業を強力にサポートしてくれます。

GLASIAOUS

GLASIAOUS

GLASIAOUSは、ビジネスエンジニアリング株式会社が提供するクラウド型国際会計&ERPサービスです。世界33ヶ国・1,500社以上の導入実績があり、世界各地の会計のプロから記帳代行や税務申告支援、コンサルティングなどを受けられます。そのため、初めて会計ソフトを導入する企業でも安心です。

記帳代行から内部統制、業務管理に至るまで、幅広い分野を支援してくれるため、業務全体を効率化できます。

GLASIAOUS

多言語・多通貨にも対応しており、7つの言語をボタンひとつで切り替え可能です。外貨については、必要な数だけ登録したうえで為替損益の自動計算や外貨評価換算にも対応しています。

費用・プラン

利用範囲によって料金は異なります。最新情報は各公式Webサイトにてご確認ください。

対応言語一覧

  • 日本語
  • 英語
  • 中国語(繁体字・簡体字)
  • タイ語
  • ベトナム語
  • インドネシア語

勘定科目やメモ情報などへの入力時は、上記以外の言語も利用できます。また、摘要欄には自動翻訳機能があるため安心です。

サポート体制

  • 経験豊富な会計事務所とIT企業による各国でのサポート
  • 年2回のバージョンアップ
  • オンサイトトレーニングの提供
  • 専用マニュアルの利用
  • 24時間365日の問い合わせ対応

さくら会計

さくら会計

さくら会計は、濱友株式会社が提供する会計ソフトです。多言語や多通貨、各会計基準に対応しており、現地の基準に合わせた帳簿作成など高い操作性を誇ります。

初期段階では、言語を日本語・英語・中国語から選択可能であり、自動翻訳機能も搭載されています。オプションでその他の言語も追加可能です。また、各国で異なる日付や時刻、金額、符号などの書式にも対応しているため、手動での調整は必要ありません。

財務会計機能も充実しており、各国の会計基準に合わせて帳簿や集計表、伝票などをカスタマイズできます。

さくら会計

集計処理には幅広い条件を指定できるため、企業ごとで異なる書式の作成も可能です。

費用・プラン

プラン名月額料金(税表示なし)初期費用主な機能
日本版「さくら会計」4,400円8,500円仕訳のテンプレート化Excelとのインポートおよびエクスポート摘要リストや取引先リストなどの追加・削除
国際版「さくら会計」8,800円仕訳のテンプレート化Excelとのインポートおよびエクスポート摘要リストや取引先リストなどの追加・削除各国の会計基準に合わせた複数帳簿作成外貨入力複数言語表示

※2023年11月時点の情報です。最新情報は各公式Webサイトにてご確認ください。

2024年1月31日までに申し込むと、日本版は1年間・国際版は6ヶ月間、月額料金が無料になります。また、ダウンロード後の1ヶ月は、初期設定費用も無料です。

対応言語一覧

日本語・英語・中国語が基本(他の言語もオプションで追加可能)

サポート体制

  • 電話およびメールサポ―ト
  • 導入時におけるスカイプサポート

勘定奉行クラウドGlobal Edition

勘定奉行クラウド Global Edition

勘定奉行クラウドGlobal Editionは、 株式会社オービックビジネスコンサルタントが提供する会計ソフトです。クラウド型であるため、日本本社と海外現地法人の会計情報や業績をリアルタイムで共有できます。国内で導入シェアNo,1を誇る勘定奉行クラウドの機能や操作性をベースに提供しているため、信頼性も高いといえます。

すべての資料が現地語で出力できるようになっており、業績の分析や共有なども手軽に実行可能です。

勘定奉行クラウド Global Edition

多通貨にも対応しており、現地通貨・機能通貨・連結通貨ごとで各種管理資料を確認できます。

費用・プラン

料金は拠点数やライセンス数によって異なります。公式サイトに記載されている料金一例は以下の通りです。

料金例月額料金(税抜表示)初期費用管理者および現地担当者数
ケース166,000円100,000円管理者:1名海外現地担当者数:1名
ケース2132,000円管理者:3名海外現地担当者数:2名
ケース3198,000円管理者:5名海外現地担当者数:3名

※2023年11月時点の情報です。最新情報は各公式Webサイトにてご確認ください。

対応言語一覧

  • 日本語
  • 英語

サポート体制

  • 世界16ヶ国32の直営拠点にあるグローバルパートナーからの導入サポート
  • 記帳代行
  • 現地レビュー
  • 現地会計レポート作成
  • 内部監査代行

など

まとめ|海外事業には海外対応の会計ソフトを活用しよう

海外展開していたり今後海外進出を目指していたりする企業では、海外の法律や言語に対応した会計ソフトの利用が必須です。海外対応できる会計ソフトを導入することで、自社の会計業務を効率化し、記入漏れや数値の打ち間違いなども減らせます。

縮小する国内市場ではなく海外進出を視野に入れている企業は、今回紹介した製品も含め、自社にとって最も効率よく導入できる会計ソフトを選ぶことが大切です。

よくある質問

なぜわざわざ海外対応した会計ソフトを導入するの?
日本と海外の会計業務を比較すると、会計基準や言語、通貨などさまざまな面で違いがあります。こうした違いを踏まえてミスなく効率的な会計業務を実現するには、多言語機能や多通貨への換算などで、海外対応できる会計ソフトの導入が必要です。
より具体的な内容は「海外進出時に発生する会計問題」の章で解説しています。
海外対応しているおすすめの会計ソフトは?
「multibook・GLASIAOUS・さくら会計・勘定奉行クラウドGlobal Edition」がおすすめです。
より具体的な内容は「おすすめの海外向け会計ソフト」の章で解説しています。