経理業務を補助する会計ソフトは、多くの企業や個人事業主に活用されています。機能や価格、UIなど各ソフトごとに特徴は異なりますが、大きく分けると、クラウド型とインストール型の2種類に分けられます。
▼クラウド型とインストール型の違い
クラウド型 | インストール型 | |
導入方法 | 会計ソフト運営会社と契約 | 購入後、PCへインストール |
支払い方法 | 月額、年額での支払い | 購入時の支払い |
利用環境 | インターネットが必須 | PCさえあればネットがつながらない場所でも使用可能 |
データの共有 | PC上で共有できる | エクスポートする必要がある |
バージョンアップ | 自動更新で対応できる | 手動で更新する |
なかでもクラウド型は、インターネット環境さえあればどこでも利用できるなどのメリットから、近年利用者が増えつつあります。本記事では、クラウド型の会計ソフトが注目される理由と、会計ソフトの選び方について解説していきます。
また、数あるクラウド型会計ソフトの中から、操作性・価格の2つの視点ごとに、おすすめの会計ソフトも紹介しますので、「会計ソフトを導入したい」「クラウド型の会計ソフトが気になっている」という方は、ぜひご覧ください。
クラウド型が注目される理由
クラウド型は、インターネットを経由してクラウド上(サービスを提供する企業のサーバーや外部のサーバーなど)にデータを保存する会計ソフトです。近年、クラウド型の普及率は増加傾向にあります。
MM総研が個人事業主を対象に実施した調査によると、「会計ソフトを利用している」と回答した人のうち、「クラウド会計ソフトを利用している」人数は上昇傾向にあることがわかりました。
参考:MM総研「クラウド会計ソフトの利用状況調査(2023年3月末)」をもとに作成
この背景には、政府による行政手続きのデジタル化があると考えられます。2021年から、青色申告特別控除が65万円から55万円に減額されました。しかし、e-taxで電子申告する場合は、変わらず65万円の控除が受けられます。
インターネット環境さえあればどこでも利用できるクラウド型の会計ソフトは、電子申告にも対応しているものが多いです。手続きのデジタル化も要因の一つとして、クラウド型の会計ソフトに注目が集まっているのではないでしょうか。
クラウド型会計ソフトのメリット3選
着実に利用者数が伸びているクラウド型の会計ソフトですが、インストール型と比較すると以下3点のメリットが特徴として挙げられます。
税制など法改正への対応が簡単
経理部門は、会社全体のお金の流れを記録・管理します。業務を通じて帳簿を作成したり、帳簿をもとに決算書を作成したりする業務です。経営状況を的確に把握するために、どの企業においても必要な業務です。
しかし、経理に関する法改正は多々行われています。例えば最近では、電子帳簿保存法が改正されたり、新たにインボイス制度が施行されたりしています。経理担当者は、計算や転記のミスを起こさないことだけでなく、最新の法改正を漏れなく把握し、確実に対応することが求められてきました。
クラウド型の会計ソフトの多くは、法改正のタイミングに合わせて、ソフトのアップデートが実施されます。更新ボタンを押すだけで対応できるため、経理担当者の負担を大幅に減らすことができるでしょう。
場所を選ばず会計業務が行える
クラウド型の会計ソフトは、データの保存から処理まで、すべてオンライン上で行われるため、インターネットにアクセスできる環境さえあればどこでも会計業務ができます。出先での業務対応に加え、感染症流行を機に広まったテレワークにも柔軟に対応できるでしょう。
また、複数のデバイスから同時にログインできるため、税理士とのやりとりも効率よく行えるようになります。同じデータをリアルタイムで共有できるため、コミュニケーションもスムーズになるでしょう。
データの紛失などのリスク回避ができる
組織全体のお金の流れを管理・記録していることから、経理部門で扱う情報は企業にとって重要かつ機密情報であるといえます。そのため、データ破損や紛失などのリスクは極力避けたいところです。
クラウド型の会計ソフトは、すべてのデータがクラウド上で管理されています。そのため、万が一使用していたPCが壊れてしまったり、PC自体をなくしてしまったりしても、重要な情報を紛失してしまう事態は起こりません。
会計ソフト、どうやって選ぶ?選び方の基準を解説
ここまで、クラウド型会計ソフトならではのメリットについて解説してきました。会計ソフトを選ぶ際には、クラウド型かインストール型か、といった視点に加え、解決したい課題や導入の目的など、自社のニーズに沿って選定することが重要です。
本章では、はじめて会計ソフトを導入しようと検討している方に向けて、どのような視点で選ぶとよいか、2つのポイントを解説します。より細かな比較の視点を知りたい方は、「会計ソフトのおすすめ8選!比較のポイントも紹介【個人事業主・中小企業別】」をご覧ください。
1.操作性で選ぶ
会計ソフトは日々の売上管理や帳票作成など、経理業務の多くの場面で活躍します。日常的に使う機会が多いからこそ、使いやすさやUIの見やすさに納得のいくものを選びたいところです。
特に、実際に操作する人のリテラシーによって、最適な会計ソフトは異なります。例えば会計業務に精通している担当者ならば、細かな用語解説などのないシンプルなもので十分ですが、会計業務初心者やPC操作に慣れていない方が担当者の場合は、手順に沿って入力するだけで済むような会計ソフトが望ましいでしょう。
会計ソフトによっては、本導入前に無料で試せるものもあります。導入後、スムーズに活用するためにも、トライアルがある場合は実際に触ってみることをおすすめします。
2.価格で選ぶ
はじめての導入の場合、本当に使えるのかわからないのでまずは安価に試したいという方や、最低限の機能だけ欲しいと考えていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。
もちろん、完全無料のソフトもありますし、かなり安価なソフトも多々あります。
もしくは、無料トライアル期間を設けているソフトを使ってみて、実際の業務の中で相性が合うかどうか見定めてみることをおすすめします。
なお、トライアル期間は30日〜1年など各開発会社によって異なります。
【簡単操作】クラウド型おすすめ会計ソフト3選
はじめての方が会計ソフトを選ぶ際の視点について解説しました。最後に、上記2視点ごとにクラウド型会計ソフトのおすすめを紹介します。
マネーフォワードクラウド会計
料金価格 | 3,980円+税/月〜 ※月額プラン |
無料トライアル | 1ヶ月 |
サポート | チャット、メール、電話 |
マネーフォワードクラウド会計は、日々の取引の入力など面倒な作業を自動化することで、業務効率を大幅に改善できる会計ソフトです。
クレジットカードやインターネットバンキングの取引明細データや、アップロードした領収書・請求書の情報をもとに、仕訳候補が自動で作成されます。一度作成した仕訳内容はAIが学習する仕様となっているため、会計ソフトを使えば使うほど精度が向上し、より業務効率がアップするでしょう。
さらに、2023年10月より対応が必須となるインボイス制度にもいち早く対応しています。仕訳入力画面のチェックボックス上で操作するだけで税額控除が自動計算されるため、簡単かつ的確に処理できます。
弥生会計オンライン
【価格重視】クラウド型おすすめソフトを3つ紹介
続いて、年間のコストを抑えられるソフトを紹介します。サポートや機能を最低限にしたソフトや、サポート込みで価格を抑えたソフトもあります。
フリーウェイ経理Lite
無料版 | 有料版(企業版) | |
月額利用料 | 無料 | 3,000円/年間36,000円(税抜) |
利用期間 | 無制限 | 1年ごと更新 |
登録できるデータ数 | 1 | 1 |
データの保存場所 | パソコン内 | インターネット上とパソコン内 |
決算書 | あり(勘定式) | あり |
部門管理・工事管理 | なし | あり |
自動仕訳 | なし | あり |
操作サポート | なし | あり |
対象 | 個人事業主 中小企業 | 中小企業 |
フリーウェイ経理Liteは、無料版であれば期間の縛りなくずっと無料で使うことができます。ライセンスの購入も必要ないほか、アップデートも完全無料です。
さらに、仕訳日記帳や総勘定元帳、試算表、決算書など多岐にわたる帳票を作成・出力できます。基本的な機能はすべて備わっているため、とにかくコストを抑えたい方にぴったりの会計ソフトといえます。
かんたんクラウド会計
Basic(ベーシック)プラン | Plus(プラス)プラン | |
利用料金 | 月額プラン:1,800円/月 年額プラン:18,000円/年 | 月額プラン:2,500/月 年額プラン:25,000円/年 |
科目体系 | 個人(一般・医療・不動産)法人(一般・工事・医療) | |
各種入力 | 仕訳入力/出納帳/振替伝票/自動仕訳(銀行・カードと連携)/レシート取込 | |
基本帳票 | 日別残/日計表/比較損益/財務報告書(推移含む)/残高一覧表/部門残高一覧表/元帳/共通補助管理表 | |
決算・報告書 | (法人体系のみ)決算書(個人体系のみ)消費税申告書/個人決算書/所得税確定申告書 | |
電子帳簿保存法 | 国税関係帳簿の電子保存、スキャナー保存 | |
アカウント | 3アカウントまで | |
サポート | メールサポート、チャットサポート | |
その他 | – | 以下にも対応 ・財務分析 ・消費税関係 ・資金繰関係 ・工事関係 |
かんたんクラウド会計は、電子帳簿保存法に対応しています。「帳簿の電子的記録の保存」「電子取引」「スキャナ保存」にも対応済みです。さらに、簿記に自信のない人でも安心できる「かんたん入力」が提供されており、以下5ステップに沿って入力するだけで簡単に会計業務が行えます。自動で仕訳に変換されるため、関係帳票への転記を行う必要もありません。
1.「収入」か「支出」か「振替」を選択 2.日付を入力 3.取引を選択 4.金額を入力 5.「登録」をクリック |
まとめ|クラウド型にもたくさんの種類がある!自社に合うものを選ぼう
クラウド型の会計ソフトは、政府による行政手続きのデジタル化などを受け、近年利用率が高まりつつあります。インストール型の会計ソフトと比べると、以下3点が特徴的です。
- 税制など法改正への対応が簡単
- 場所を選ばず会計業務が行える
- データの紛失などのリスク回避ができる
今回は、会計ソフトをはじめて導入する方に欠かせない2つの視点「操作性」「価格」の2観点から、クラウド型の会計ソフトを紹介しました。本記事を参考に、クラウド型の会計ソフトの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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よくある質問
Q1.クラウド型の会計ソフトの特徴は? |
インストール型の会計ソフトと比べると、以下3点が特徴的です。 ・税制など法改正への対応が簡単 ・場所を選ばず会計業務が行える ・データの紛失などのリスク回避ができる |
Q2.会計ソフトの選び方は? |
はじめての導入の際は、まずは以下の2観点を軸にして各ソフトの特徴を把握してみましょう。 1.操作感 2.価格 とはいえ一番重要なのは「自社の課題感が解決されること」です。なぜ導入したいのか、自社が抱える課題感は何かを整理したうえで、会計ソフトを選んでいくことをおすすめします。 |