経理業務では、会社経営にて重要なお金の管理を行います。どの企業にも欠かせない業務ではあるものの、直接的に利益をもたらすわけではないため、できる限りコストを削って効率化したい企業は多いでしょう。とはいえ一概にコストカットしてしまうと、業務負荷による人的エラーの発生などが懸念されるため、バランスが難しい部分でもあります。
人的コストを抑えつつ効率化を図るのに有効な手段の1つが、経理ソフトの導入です。経理ソフトを効果的に活用すれば、経理業務にかかる悩みを解決できる可能性が高まります。とはいえ世に出回る経理ソフトは数多く、自社の課題を解決できるソフトはどれなのか、新たな悩みが生まれてしまう方もいるのではないでしょうか。
本記事では、経理ソフトで解決できる悩みや経理ソフトの種類、比較ポイントを解説した上で、おすすめの経理ソフト11製品を紹介します。
経理ソフトで解決できる経理業務の悩み4選
そもそも経理とは、会社内でのお金の流れを管理する重要な部署です。財務に関するデータをもとに、経営陣に対して改善提案を行ったり、株主に対して決算報告をしたりと、組織経営において重要な業務を担っています。
▼経理業務の例
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経理部門は商品やサービスの販売とは異なり、直接的に企業の利益をもたらす業務ではありません。そのため、出来るだけコストを抑え、効率化を図りたいなど、経理に関する悩みをもつ企業は多いのではないでしょうか。
課題解決に有効な手段の一つが、経理ソフトの導入です。本章では、具体的にどのような悩みが解決できるのか、見ていきましょう。
業務の属人化
経理業務には簿記などの専門知識が必要なため、属人化しがちです。また、長年同じ従業員が担当している場合、業務がブラックボックス化する恐れもあります。属人化している状態で万一担当者が急に変わることがあれば、業務品質の低下や混乱を招きかねません。
経理ソフトの多くは、勘定項目に沿って仕訳を入力していくだけで、自動で各種帳票に数値が反映されるため、専門知識が少なくても簡単に経理業務を行うことができます。操作方法や勘定項目のルールを決めてしまえば業務が一人に偏ることもなくなるので、属人化解消が叶うでしょう。
業務量の多さ
先述したように、経理部門は利益を直接生み出す業務ではありません。そのため、どうしても配置される人員は少なくなりがちで、一人ひとりの業務量が多くなっていることが多いです。
そのため、経理担当者はオーバーワークに陥りがちです。特に、請求処理が集中する月末や月初、年末調整の時期は業務が膨大になり残業時間が長くなりやすい点も課題の一つでしょう。
経理ソフトは、日々の仕訳をこまめに入力しておけば、帳票に数値が反映されるため、スポット的に業務量が増えすぎることを防げます。
ミスが許されない
経理業務にミスがあれば、経営陣は事実と異なる経営計画を作成してしまう恐れがあります。税務調査で指摘が入ったことが発覚すると社会的信用を失い、取引先から契約を打ち切られる事態になりかねません。
かといって、ミスを恐れて作業が遅れ、業務全体を滞らせることもできません。なぜなら、スピードが価値を生む今の情報社会では、少しの遅れが大きな損害につながる恐れがあるからです。税制などの改訂にも、速やかに対応しなければならないことも、経理業務では悩みどころです。
経理ソフトは人的エラーを防ぎやすいのが特徴です。紙での管理だと、仕訳の数値を各帳票に転記する際にミスが生じる可能性があるからです。また、経理ソフトによっては、数値が合わない場合にアラートが出るものがあります。ミスを少なく、簡単に帳票作成できるのが経理ソフトの強みの一つです。
書類の多さ
経理部門では、請求書や納品書、伝票など紙でのやりとりが多くなりがちです。また、取引先へ送付する請求書だけでなく、社内伝票や精算書なども紙で運用している企業が多く、「紙の使用」は経理担当者の業務効率化を妨げている要因になっています。
経理ソフトを使えば、各種帳票は電子データとして管理ができます。2022年に電子帳簿保存法が改正され、仕訳帳や損益計算書など、電子的に作成した帳簿はデータのまま保存できるようになりました。場所を取らないだけでなく、法改正に対応していくためにも、経理ソフトの導入は検討すべきです。
▼電子保存時の要件
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経理ソフトの種類は2種類に大別
経理ソフトは、インストール型とクラウド型の2種類に大別されます。両者の特徴や注意点を比較しましょう。
インストール型
インストール型は、オフラインで会計業務を行うものです。一度家電量販店やWeb上でパッケージを購入し、PCにダウンロードしてしまえば基本的に月額料金はかかりません。しかし、法改正などでシステムのバージョンアップが必要になった場合、追加費用が必要になったり、手作業によるシステム構築が必要になったりすることがあります。
クラウド型
クラウド型は、オンライン上で会計情報を管理、処理を行うものです。月々の利用料がかかりますが、アップデートも自動で行われるため、法改正等に迅速かつ柔軟に対応しやすいです。ソフト自体もデータもオンライン上に保存されるため、インターネット環境が必須になります。
経理ソフトの比較ポイント
経理ソフトには、さまざまな種類があり、企業規模や使用者のITリテラシーなど、複数の要因によって最適な経理ソフトが変わります。
以下に7つ、経理ソフトの比較ポイントを解説します。自社の導入目的と照らし合わせ、必須のポイントや優先度の高いポイントを事前に明確にしておくと、より比較しやすくなるでしょう。
ソフトの対象は自社の規模と合致するか
個人事業主と法人では、使用する勘定科目や決算書類など、あらゆる点が異なります。ソフトの多くは法人向け、個人事業主向けと対象がさまざまで、それぞれの特性に適した仕訳・決算処理を行えるようなシステムになっています。
また、使用が想定される人数・企業規模によって違うため、導入実績やプラン一覧を確認し、自社の規模感と合致するかも確認しておきましょう。
使いたい機能が備わっているか
自社の業種やこれまでの会計業務で扱っていた項目などに合わせて、経理ソフトに必要な機能が備わっているか確認しましょう。経理ソフトによっては、会計事務所向けや飲食店向けなど、一部の業種に特化したものもあります。
事業の継続にともない、自社の規模や業種が変わる可能性もあります。その場合、必要な機能やスペックも変わってくるため、その場合は拡張性の高い経理ソフトを導入できると安心でしょう。
他サービスとの連携ができるか
経理ソフトの中には、銀行やクレジットカードと連携できるものも少なくありません。すでに利用している銀行やクレジットカードと連携できると、口座情報など速やかにソフトに反映できて便利です。入力の手間も省ける上に、転記ミスも減らせるでしょう。
また、経費精算システムなどの外部ツールと連携可能なソフトもあるため、連携させて使いたい場合は注目すべきポイントです。
サポート体制は整っているか
経理ソフト利用が初めてだと、トラブルが起こることは十分考えられます。トラブル解決が長引くと、業務に支障が出かねません。
導入に不安がある場合は、もしもの事態に備えて電話やチャットなどで気軽に相談できると安心です。
本導入前に試用版が利用できるか
日々触れるツールだからこそ、使い心地やUIの操作性など事前に確認しておくことで、導入後もスムーズに活用できます。
もし無料プランがあるならば、まずは試しに導入し、確かめてみるとよいでしょう。また、有料の経理ソフトでも、30日間無料など、試しやすいものもあります。実際にソフトを扱う方に触ってもらい、使用感を比較するのもおすすめです。
電子帳簿保存法へ対応しているか
2022年1月、電子帳簿保存法が大幅に内容変更されました。本改定により、原則紙ベースで保存しなければならなかった各種帳簿について、一定の要件を満たせば電子データとして保存してよいこと、電子的に授受した取引情報はデータにて保存してよいこととなりました。
電子帳簿保存法の対象となる主な保存区分は「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引」の3つで、経理ソフトで作成した帳簿書類の電子保存が該当するのは「電子帳簿等保存」です。
必要な帳簿書類をすべて紙に出力して保存するのは労力がかかるほか、2024年1月からは、請求書類を印刷し、紙ベースで保存することができなくなります。そのため、経理ソフトを利用し、経理にかかるデータはすべて電子保存するのがおすすめです。
【インストール型】おすすめの経理ソフト6選
以下に6つ、インストール型のおすすめ経理ソフトを紹介します。
▼インストール型のおすすめ経理ソフト一覧
ソフト名 | 料金価格(税込) | 無料トライアル期間 | 無料プランの有無 |
フリーウェイ経理Lite | 0円〜 | なし(無料プランあり) | あり |
PCA会計DX | 224,400円 〜 | 2ヶ月 | なし |
JDL IBEX会計 | 162,800円 | なし | なし |
SMILE V 2nd Edition 会計 | 要見積り | 30日間 | なし |
経理上手くんα | 7,200円/年 | 60日間 | なし |
勘定奉行 | ・月額 7,750円〜 ・初期費用 0円〜 | 30日間 | なし |
フリーウェイ経理Lite
フリーウェイ経理Liteは、株式会社フリーウェイジャパンの経理ソフトです。永年無料ながら、基本的な経理ソフト機能を使えます。創業から30年以上、30万個以上のユーザー利用実績を有しており、経理業務のサポートノウハウは豊富です。
基本無料で利用できますが、有料版(企業版)もあります。こちらは部門管理・工事管理ができるようになるほか、データをクラウド上に保存できるため、インストールとクラウドの良いとこどりができるソフトでもあります。
まずは無料版から試してみて、有料版へ移行するのも良いのではないでしょうか。
PCA会計DX
【PCA会計DX】
PCAは、ピー・シー・エー株式会社の会計ソフトです。中小企業向けに特化した機能を有しています。
PCA会計DXは、ログ管理やアクセス制御など、充実のセキュリティ機能を誇ります。また、仕訳条件も柔軟に変更できるので、さまざまなシチュエーションの取引に対して対応可能です。APIによって各種他製品との連携もスムーズなので、他ツールと連動させたい方にもおすすめできます。
JDL IBEX会計
JDL IBEX会計は、株式会社日本デジタル研究所(JDL)のインストール型会計ソフトです。WindowsOSのPCで利用できます。
レシートを読み取って、整理を効率化してくれる「e-レシート」など、特許取得技術を活用し、経理業務を効率化してくれます。また、姉妹製品であるJDL IBEX原価管理・工事台帳と連携させれば、原価に関する取引データを簡単に共有できるため、より経理業務の効率化が可能です。
SMILE V 2nd Edition 会計
SMILE V 2nd Edition 会計は、株式会社大塚商会のインストール型会計ソフトです。リアルタイムな経営状況確認や経営分析をサポートしてくれます。
引用:SMILE V 2nd Edition 会計公式ホームページ
国税関係帳簿の作成・保存が可能なソフトウェアとして、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証を受けています。また、セミナー情報などもホームページ上で公開しているので、参考にしてみてください。
経理上手くんα
【経理上手くんα】
経理上手くんαは、日本ICS株式会社の経理ソフトです。FAXやメールで申し込むと、数日後にライセンスキーが通知され、後はプログラムをホームページ上でインストールすれば使えます。
経理上手くんαには4つの便利機能があります。オンライン環境下であれば、プログラムの自動更新やアップデート通知を受け取ることができるので、最新の法改正にも安心して対応できるでしょう。また、建設業界や非営利法人向けに特化した姉妹製品も提供しています。該当している業界であれば活用を検討してはどうでしょうか。
勘定奉行
【勘定奉行】
勘定奉行は、株式会社オービックビジネスコンサルタントの会計ソフトです。インボイス制度・電子帳簿保存法で求められる経理業務にも完全対応しています。
引用:勘定奉行公式ホームページ
自社の経理ルールを学習し、仕訳を自動化してくれます。そのため、業務効率化と同時にミス軽減も叶います。また、さまざまな他ツールとの連携ができるのも強みの一つです。
【クラウド型】おすすめの経理ソフト5選
以下に6つ、クラウド型のおすすめ経理ソフトを紹介します。
▼クラウド型のおすすめ経理ソフト一覧
ソフト名 | 料金価格(税込) | 無料トライアル期間 | 無料プランの有無 |
freee会計 | 1,480円/月〜※月払い | 30日間 | なし |
マネーフォワードクラウド会計 | 3,980円/月〜※月額プラン | 1ヶ月 | なし |
弥生会計オンライン | 2,383円/月※月額プラン | 2ヶ月 | なし |
TKC FXクラウドシリーズ | 8,800円/月〜 | なし | なし |
クラウド発展会計 | 5,000円/月~ | 2ヶ月 | なし |
freee会計
【freee会計】
freee会計は、freee株式会社のクラウド会計ソフトです。個人事業主から大企業まで、あらゆるユーザーから支持を得ています。クラウドソフトなので、オンライン上で、簡単に経理書類作成や経営状況確認を実施できるのが強みです。また、Google、Apple、Microsoftのアカウントでもログインできます。
マネーフォワードクラウド会計
マネーフォワードクラウド会計は、株式会社マネーフォワードのクラウド会計ソフトです。データのクラウド化により、経営の見える化を実現できるのが強みです。また、仕訳状況をAIが学習し、使えば使うほど自動で仕訳できるようになります。クラウド上でデータをやりとりできるため、顧問税理士とは最新のデータをオンラインで共有可能です。
弥生会計オンライン
弥生会計オンラインは、弥生株式会社のクラウド会計ソフトです。経理業務を強力にサポートし、本業に集中する手助けをしてくれます。
導入後のサポートも手厚く、製品の操作方法や経理業務まで、専門スタッフが親身になってサポートしてくれます。また、有償利用者は福利厚生サービス「クラブオフ for 弥生オンライン」を使えるので、お得に提携先の各種施設・サービスを使うこともできるでしょう。
TKC FXクラウドシリーズ
TKC FXクラウドは、株式会社TKCのクラウド会計ソフトです。「会計で会社を強くする」ための機能を、豊富に有しています。例えば、社内の業績を、速報として自分のスマートフォンやタブレットに送信するよう設定できます。また、電子帳簿保存法の法的要件を満たすソフトとして、日本で初めて日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)より認証されました。
クラウド発展会計
【クラウド発展会計】
クラウド発展会計は、日本ビズアップ株式会社のクラウド会計ソフトです。企業経営のDX化を、経理の面からサポートします。例えば銀行取引状況の自動取込や経営資料作成など、経理業務の自動化に役立つ機能を多数有しています。また、経営に役立つ情報が豊富なメールマガジンも届くので、旬なテーマに関する最新の情報をいち早くチェックすることができるでしょう。
まとめ|経理ソフトで経理業務を早くミスなく実行!
経理業務では、ミスが許されない上に、業務量も多くなりがちで、属人化もしやすいことが課題です。それらの課題を解決するために有効な手段が、経理ソフトの活用です。
経理ソフトは、オンライン上で使用する「クラウド型」と、インストールすればオフラインで使える「インストール型」に大別されます。実際の利用シーンを想定し、メインのユーザーや使える機能などを考慮して、最適な経理ソフトを選択しましょう。無料トライアルや無料プランを使える場合は、お試しで使ってから実際に有料プランに申し込むこともおすすめです。
なお、本サイトでご紹介している一部の会計ソフトは、アフィリエイト広告の出稿を受けています。
よくある質問
Q1.経理ソフトでどのような悩みを解決できる? |
経理ソフトを効果的に活用することで、経理業務のさまざまな悩みを解決できるでしょう。 例えば、経理業務は少数の従業員により実施されることが多いため、属人化や業務量の多さに悩む企業が多く存在します。また、金銭を取り扱う業務性質のため、ミスが許されません。これらの悩みも、経理ソフトを活用することで解決できるでしょう。 詳しくは「経理ソフトで解決できる経理業務の悩み4選」の章をご覧ください。 |
Q2.経理ソフトの比較ポイントは? |
経理ソフトを使う過程で、操作方法がわからないなどのトラブルが発生することもあるでしょう。そのため、自信がなければサポート体制が充実している経理ソフトの活用がおすすめです。 また、無料プランや無料トライアルがあれば、それらを活用して使い勝手を試すことをおすすめします。詳しくは「経理ソフトの比較ポイント」の章をご覧ください。 |