経理初心者のうちから幅広い知識・スキルを身につけておくと、日々の業務が効率化します。
とはいえ、経理の仕事を始めたばかりの方のなかには「どのようにスキルアップすればよいかわからない」「そもそもどのような業務なの?」と不安を抱く方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、経理初心者が身につけておくべきスキルやおすすめの勉強法を解説します。
なお、本記事で紹介している会計ソフトはアフィリエイト広告の出稿を受けています。
経理の役割と主な仕事内容
経理は日々の取引を記録する業務です。経理業務は日次業務、月次業務、年次業務に分けられます。
- 日次業務:日々の取引を仕訳し、帳簿に記録
- 月次業務:毎月の取引を集計し、必要であれば月次決算書を作成
- 年次業務:年間の取引を総括し、決算書にまとめる
経理業務の頻度は日次業務、月次業務、年次業務の順に多くなります。日次業務で日々の取引をこまめに記録しているからこそ、月次業務や年次業務で取引を正確にまとめることが可能です。
経理業務は企業において財政および経営の状態を記録するうえで欠かせない役割を果たしています。
使用する帳簿
簿記で使われる帳簿は大きく主要簿と補助簿に分かれており、主要簿と補助簿を組み合わせることでお金の流れを過不足なく記録できます。
主要簿
主要簿は日々の取引や勘定科目ごとの残高を記録するために使われます。「日記帳」「仕訳帳」「総勘定元帳」などが該当します。
補助簿
補助簿は現金や売上など、少額かつ頻繁に発生するお金の出入りを記録するための帳簿です。大きくわけると、「補助記入帳」「補助元帳」にわかれます。
補助簿 | 詳細 |
---|---|
補助記入帳 | ・現金出納帳 ・小口現金帳 ・預金出納帳 ・仕入帳 ・売上帳 ・受取手形記入帳 ・支払手形記入帳 |
補助元帳 | ・売掛金元帳 ・買掛金元帳 ・固定資産台帳 |
保管義務のある書類
経理・税務業務で使用する書類には、法律によって5~10年の保管義務が定められています。書類によって最低の保管期間が異なるため、注意が必要です。
なお、インボイス制度にともなって発行される適格請求書(インボイス)の場合は法人・個人事業主を問わず、最短で7年の保管が義務づけられています。
経理の仕事で必須の基礎知識
経理の業務を円滑にこなすには分野をまたいだ知識が求められます。一般的な経理業務で必須の基礎知識は主に以下の通りです。
● 簿記の基礎
● 会計の基礎
● 会社経営の仕組み
● 基本的なPC操作
ここでは、経理の仕事で最低限求められる基礎知識を解説します。
簿記の基礎知識
簿記は経理の必須業務です。日々の業務で必ず使うスキルであり、企業の取引を正確に記録し、財務データの土台を作る役割を担います。
具体的には、現金の出入りや売上、経費などすべての取引を仕訳帳に記入し、これをもとに総勘定元帳に転記する業務です。
簿記では基本となる仕訳はもちろんのこと、主要簿や補助簿などの帳簿を正確に使いこなすスキルが求められます。
実務レベルで特に有用なのは日商簿記です。日商簿記は3級から1級に分かれていますが、実務では2級を取得していればひと通りの仕事をこなすことができます。
会計の基礎知識
簿記と会計は似ているようで、役割の異なる領域です。
簿記は日々の取引や現金の出納を記録する作業を指し、決算書の土台を作る役割を担います。一方、会計は簿記によって記録されたデータを基に、会社全体の利益や財政状態をまとめて報告する業務です。
日々の簿記業務を会計という大きな単位にまとめるイメージを持つと理解しやすく、会計の知識を深めておくことで、将来的なキャリアアップにもつながります。
会社経営の仕組み
経理業務は決して、「取引を記録する作業」ではありません。特に将来、企業の経営や財務部門に昇進することを目指すなら、会社経営の仕組みの理解が必須です。
また、経営や財務部門への転身を視野に入れていなかったとしても、日々の経理業務に経営視点を取り入れることで1つ1つの記録の必要性がわかり、業務効率化・ミスの防止につながります。
経営の全体像を把握することで、経理の仕事に対する視野が広がり、将来的なキャリアパスの充実も可能です。
基本的なPC操作
経理業務の多くはPC上で行われるため、基本的なPC操作が欠かせません。特に必須なのは以下のスキルです。
スキル | 概要 |
---|---|
会計ソフト | 仕訳の入力や決算書の作成など経理業務の中心的な役割を果たします。 |
クラウドシステム | データの共有やアクセスの効率化につながり、テレワークにも対応可能です。 |
Word | 報告書や会議資料の作成に使用します。 |
Excel | データの集計や分析に不可欠なツールです。関数やピボットテーブルを使いこなすことで、業務の効率化が可能です。 |
勤怠管理システム(企業による) | 従業員の勤怠データの管理や給与計算に使用されます。 |
これらのツールを使いこなすことで、経理業務を効率的に進め、ミスを減らすことが可能です。
経理初心者に役立つ資格
経理職では初心者のうちから上位の資格を取得しておくことで業務効率化につながります。また、専門性の高い資格を取得しておくと将来的なキャリアパスの充実も可能です。
ここでは、経理職初心者に特におすすめの3つの資格に絞って、取得のメリットを解説します。
簿記
経理業務で簿記の知識は必須です。簿記の資格保有を採用条件として掲げている企業も少なくありません。
簿記の資格を取得することで仕訳や財務諸表の作成、検算など、経理業務に必須の知識を体系的に網羅できます。
また、会社の仕組みなど、理論的なことも詳しく学べるため、経理を単なる流れ作業ではなく「企業を支える重要な業務の一部」としてとらえることが可能です。
特に2級以上を持っていると実務レベルで活用しやすく、現場でも重宝されます。
ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナー(FP)は経理の上位職として位置づけられる職種です。取得しておくことで信頼性が向上し、業務の正確性が高まります。
もちろん、キャリアパス充実の面でも有効です。
国税庁公表の「令和4年分民間給与実態統計調査」では、経理職全体の平均年収は523万円と報告されています。
一方、FPの年収は幅が広く、独立してさらにスキルを磨けば年収1,000万円を目指すことも夢ではありません。
このように、FPを経理職の先のキャリアパスとして位置づけることで年収アップにつながり、長期的なモチベーション維持にも効果的です。
学習方法によって取得費用は異なりますが、受験費用などを含め、2級であれば15~20万円程度かかります。
MOS検定
MOS(Microsoft Office Specialist)検定はOfficeソフト全般にわたる操作スキルを証明する資格です。Word、Excelをはじめ、実務でよく使うOfficeソフトへの理解が深められるため、取得することで業務効率が向上します。
最近では経理職でも、採用基準として「MOS検定の取得」を掲げている企業も増えてきました。MOS検定を早い段階で取得しておくことでPC操作に関するスキルの証明になり、転職の選択肢が広がります。
また、MOS検定ではPowerPointなど幅広いアプリについて知識が深められるため、経理以外の部署に配置転換した際も有利です。
経理初心者におすすめの勉強法
資格取得のための勉強法は大きく、独学とスクールに分かれます。それぞれ一長一短があるため、自分に合った学習スタイルの見きわめが大切です。
ここでは、独学とスクールそれぞれのメリット・デメリットを解説します。
独学
ほとんどの資格は独学で取得可能です。
独学の場合、カリキュラムに縛られず、自分のペースで学習が進められます。また、スクールのような初期費用を最小限におさえられる点もメリットです。今の時代、参考書だけでなくYouTube動画などさまざまなツールを組み合わせて学習を進められます。
一方で、習熟度がわかりにくく、モチベーションが維持しにくい点がデメリットです。独学であっても自分なりに目標を設定し、モチベーションを見つけることで学習が長続きします。
スクールに通う
独学ではモチベーションが続きにくい方にはスクールでの学習がおすすめです。
スクールならプロの講師陣による指導が直接受けられるため、学習のフィードバックがしやすく、モチベーションが続きやすいメリットがあります。オンラインスクールなら通学時間が削減されるため、仕事などで忙しい方にも人気です。
とはいえ独学と比べるとコストがかかるため、あらかじめ必要な費用をシミュレーションしておきましょう。
経理初心者でも使いやすい!おすすめの会計ソフト
経理職では会計ソフトの操作が必須です。ここでは実務レベルで重宝されている以下の会計ソフトに絞って、概要やメリットを解説します。
- 弥生会計
- マネーフォワードクラウド会計
- フリーウェイ経理Lite
弥生会計
【弥生会計】
小規模企業向けの会計ソフトです。レシートの自動入力・仕訳機能が標準で搭載されているため、日々の集計業務を大幅に効率化できます。
オンラインアプリと連携させることでモバイル端末上があればどこでもデータの入力が可能です。さらに、「misoca」などの外部システムと連携させることで帳簿データをシームレスに共有でき、クラウド上で安全に管理可能です。
クラウドアプリとデスクトップアプリを組み合わせることでオフィス、外出先と時間・場所を選ばずデータの記録ができるため、さらなる業務効率化につながります。
マネーフォワードクラウド会計
中小企業向けの会計ソフトとして多く導入されています。明細の自動取得や外部アプリとの連携機能だけでなく、POSレジとの連動など多様な機能を組み合わせることで業務の効率化が可能です。
「マネーフォワードクラウド経費」と連携させることで電子帳簿保存法対応の経費精算が短時間で行えるため、日々の業務がスピードアップします。
専門知識があまりない経理初心者向けから上級者に特化した「MFクラウド会計」まで、ターゲットに合わせて幅広いグレードのアプリを提供しているため、事業所の規模に応じた最適な選択が可能です。
フリーウェイ経理Lite
基本機能が無料で利用できる会計ソフトです。無料でありながらデータの自動入力や仕訳、帳簿の出力まで幅広い機能が標準搭載されているため、一般企業の会計業務でも重宝されています。
無料ですがアップデートは定期的に行われており、永久無料で安心して利用できる会計ソフトです。
さらに専門的な機能を利用したい場合は有料版の「フリーウェイ経理Pro」に切り替えることもできます。
まずは無料版で使い方に慣れておき、事業規模がある程度大きくなったら有料版に切り替える、などの利用方法もおすすめです。
まとめ|基礎知識を身につけ、経理初心者からの脱却を
経理職では簿記やPC操作など、幅広い基礎知識を身につけることで業務効率化につながります。また、基礎をベースに専門性が高い上位資格を取得することは将来的なスキル向上や年収のベースアップにも有効です。
長期的なキャリアデザインをイメージしつつ幅広い基礎を習得し、納得のいくキャリアアップを実現させましょう。
よくある質問
経理の仕事に必要な知識はどのように学べば良いですか? |
経理の仕事に必要な知識は、主に独学とスクールに通う方法で学べます。 それぞれのメリットとデメリットを把握して、自分に合った方法を選びましょう。 実務経験が積めるよう、実際の業務に携わる機会を増やしていくことも大切です。 |
経理初心者におすすめの資格にはどのようなものがありますか? |
経理初心者には、経理業務のスキルを広くカバーできる簿記検定や、PC操作のスキルを証明できるMOS検定などがおすすめです。 |